2022年8月25日 更新
組織染色で死細胞を判断する新しい指標!
組織切片やスフェロイドや細胞構造体で、細胞が生きているのか見たいという要望がよくあります。細胞死のマーカーとしてアポトーシスを検出するTunel染色や、固定前の細胞で生死判定するためのトリパンブルー染色などがありますが、細胞死の種類の区別なく染色するマーカーは知る限りありません。
現状ではHE染色を行い、クロマチンの顆粒状の凝集、核の濃縮や消失、細胞の空胞化など形態学的な特徴により判断するという方法がとられていますが、専門的な知識がないとなかなか判別できません。
そこで、今回は当社で細胞死の新しい指標になりそうな興味深い結果が得られていますのでご紹介します。
その方法は、細胞内のリボソームRNA(以下rRNA)の有無、つまりその細胞でタンパク質への翻訳が行われているか否かを見ることを細胞の生死判定の指標にすることです。
どの時点から細胞が死んでいるかという議論はさておき、赤血球を除いて『rRNAを持たない細胞は、生細胞の機能を果たしていない死細胞という解釈』になります。
当社では細胞内rRNAを検出できるプローブを有しています。
このプローブを用いてISH法で細胞内リボゾームRNAの有無を見ることができます。
つまり『ISHで染まらない細胞が死細胞』だと推測できます。
これまで当社で面白い染色結果が得られていますので、その一例を載せます(図1、図2)
図1 マウス胚様体の連続切片を用いた染色
HE染色(左)、rRNA染色(右)
胚様体の中心部分の細胞(A)では、クロマチンの凝集や核の断片化や消失が観察され、その部分では、リボゾーマルRNAで検出されない細胞が多い。核が明瞭に見えているBの部分の細胞ではリボゾーマルRNAが検出されている。
図2 ヒト肺がん組織連続切片を用いた組織染色
HE染色(左)、rRNA染色(右)
Aの部分では、HE染色でクロマチンの凝集や核の断片化、消失が観察されており、リボゾーマルRNAは検出されず、核が明瞭に見えているBの部分の細胞ではリボゾーマルRNAが検出されている。また、リボゾームを持たない赤血球(C)ではrRNAは検出されない。
結果
図1、図2からも①HE染色でクロマチンの凝集や核の消失などが見られる細胞②rRNA染色で染まらない細胞は同様で死細胞と判断できます。
これまで多くの検体を染色しましたが、いずれもほぼ同じ傾向がみられ、細胞の生死判定の指標に十分使えそうなことがわかりました。
当社では、ヒト組織用、マウス組織用、それぞれのリボゾーマルRNAプローブと染色キットを販売しています。
ぜひ一度お試しください。